2020/05/05

「朱盗」司馬遼太郎短篇全集三

藤原広嗣の乱の話。大宰府で謀反をおこす準備をしていたとき逃げた加奈をおって。扶余ノ穴蛙と会う。
穴蛙は祖父が百済のひとで、亡命した子孫の一人。そこで加奈をみつけ、穴蛙からそこでまぐあうように言われ、催眠術にかかったかのようにやってしまう。
広嗣は穴蛙を大将軍鬼室福信にみたて、軍師として呼ぶが、負けてしまう。
穴蛙は筑紫の貴人の墳にむかって穴を掘りつづけていた。その古墳は大野山の山麓にあり大宰府からは遠い。その古墳から朱をとるのだという。

なんとも大それた話で、藤原広嗣の乱と奇怪な穴掘りと組み合わさせて、司馬さんらしい作品になっている。どこからこの穴掘りの話をみつけてきたのか。
大野山というのはいまの四天王山のことのようで、小説だとはるか遠くと思うけど、大宰府からは結構近い。たしかに穴を掘るとなる遠いけれど。
司馬さんの小説の悪いところというか、すごいところなんだが、まるで史実であるかのように読めてしまう。それで多くの人が騙されてきて、司馬史観なるものがうまれていく。
ほんとに百済の軍師がいたような感じなるし、広嗣の人となりも司馬さんの想像なんだが、この乱も冗談が真になったものとして描いていて、ほんまかいなという感じ。
悪いのは読者であって司馬さんではないけど。

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