2020/05/21

「果心居士の幻術」司馬遼太郎短篇全集四

筒井順慶は松永弾正が信長暗殺の企てを聞き、それを行うのは果心居士があやしいことを信長にのべる。
興福寺にベーダンタという天竺人の婆羅門僧がたってくる。ベーダンタそこで受戒し、仏法僧となるが死におよんで、隠し子がいることを伝えられ、それが果心居士だった。
果心居士は仏法僧として育つが、のち婆羅門学を学び破門となる。
弾正は信長ににらまれ滅ぼさる。居士は弾正の死後、伊賀に身を寄せるが、そこにも信長の伊賀攻めにあう。居士は順慶にひそかに会い、逃がしてくれるよう頼む。居士は順慶をいくどか助けるが、秀吉に謁見したさいに、惨殺されてしまう。

これは有名な短篇ではあるのだけれど。んーやはり、どうも好きになれませんね。
司馬さんの小説の面白さは、人生の数寄を描くところにあると思う。この短篇もたしかに居士の数奇な運命を描いているのだけれど。
「人生は小説より奇なり」というが、司馬遼太郎の小説は、この言葉通りを小説を書いている。だれかの人生の数寄を描くのが得意だが、このような忍者ものは単なる「小説」に堕してしまっている。
幻想小説自体が悪いとは思わない。たとえば『兜率天の巡礼』なんかはおもしろい。この小説の主人公は実際に存在するひとでもあるので、書いてある内容に想像やウソが混じっていても、白けることがない。

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