2020/05/29

「女は遊べ物語」司馬遼太郎短篇全集四

伊藤七蔵政国は信長の部下で、戦場で日々を戦っていた。戦場での働きで報償をもらい、石高もあがっていくが、妻である小梅は金遣いがあらく、さらに小梅の斡旋で小梅の友人のおてんを妾にすることになる。
おてんも小梅同様に金遣いが荒い。
秀吉はそんな七蔵に興味を覚え、話を聞くと七蔵は女房は悪妻だという。秀吉は
「悪妻なものかよ。その女房殿が浪費すればこそ、七蔵は働くという仕組みではないか。いわば、殿(信長)にとっては大そうな忠義者であるわい」
という。
小梅は巫女博打で大損をしたようで、手紙になんとか手柄をとってほしいと書いてあり、七蔵は脅迫ではないかと思うが、秀吉の小谷城攻めで一番駆けをなす。だれしもが七蔵の無茶をみて「慾に呆けた」と思った。
「人間に勇怯のちがいはない。慾に駆りたてられた男だけが勇者になる。七蔵は、まぎれもなく勇者じゃ」
と秀吉は考える。
七蔵は千石取りになったにもかかわらず、家来をもとうとしないことで信長から怒りをかう。秀吉はすかさず七蔵がほしいと信長から譲ってもらう。
秀吉は七蔵には知行はやらず、そのつど金銀を与えてやったが、七蔵にとって金遣いの荒い女房二人のため、そちらのほうが都合がよかった。

名品ですね。女たちがいきいきとしていて、いいですね。
登場人物全員のキャラクターがよくでている。融通のきく信長、人の扱いがうまい秀吉などなど。
ただ最後の伊藤忠にゆかりがあるのないのは蛇足。
女房に尻を叩かれて男はがむしゃらに働くっていうやつですが、こんな内容の小説は現代で書こうものなら、ステレオタイプな老害と見なされる恐れが。

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