2020/05/24

「侍はこわい」司馬遼太郎短篇全集四

商人の娘お婦以は武士相良庄之助に嫁ぐ。お婦以は大坂生まれだが、江戸風のしきたりで育ち、みずから武士に嫁ぎたいことをいっていた。
お婦以は庄之助が浮気しているのではと勘ぐり、与吉に探ってもらうが、庄之助にばれてしまう。庄之助は内山彦次郎が新選組に殺された仇を討つという。与吉は秘密にしておくように言われたがお婦以に話し、裏で仇である松田倉蔵を逃がす善後策をたてる。
江戸期に育まれた武士の奇妙な生態がテーマ。
「おれのいうことがきけぬなら、いったん明かした以上、やむをえぬ。口を閉じさせるために死んでもらわねばならぬ」
いつもの穏やかさが消え、狂人のような暗い光をやどす。
仇討ちは誉れだけど、実行すればお家取り潰し的なかなりの厳罰を受けると言うのだから

おもしろい。武士というのはかなりねじれた存在である。戦国の時代のように損得でうごくのではなく、名誉とかが重視されるようになる。
武士というものをどこか見下しているところがあるが、とはいってもその生態のおかしみと清らかさを同時に描いている。
お婦以の存在がこの短篇に明るさをもたらしている。

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