2020/05/20

「飛び加藤」司馬遼太郎短篇全集四

永江四郎左衛門らは辻で出会った幻術師を上杉謙信二に紹介する。腕試しをさせると難なく、それ以上のことをやってしまい謙信は畏怖し、殺すことにするが、そこから逃れて云々。
正直、あんまりおもしろい短篇ではないと思う。
ぼくは忍者ものが好きではないというのあるかな。なんか暗いですからね。この小説は特段、暗さをもつわけではないのだけれど、司馬さんがもつ文章の陽気さがなくなってしまっている。ことさら忍者や幻術師に暗さを求めすぎている。明るい妖術師なんか魅力的ではないのかもしれないけど。
どうしてこうも忍者ものに親しめないかといえば、司馬さんがいうよう「荒唐無稽」だからかな。
荒唐無稽な話自体は好きだけど、司馬遼太郎の小説を読む際、ぼくは「荒唐無稽」を求めていないことがある。司馬さんは小説家だし、ウソを紛れ込ましても全然いいんだけど、読んでいるときは、どうしてもそこに実在する人物がいて、非常に具体的な実在ですね、それがあって、司馬さんの小説が出来上がっている。だから「荒唐無稽」でもウソでも本当と信じちゃう魔力がある。
でも、忍者ものは鼻から、実在するのかどうかも怪しくて、幻術だってなんか白けちゃう感じがする。鼻から「荒唐無稽」な存在でもあるため、司馬さんの実存的な小説手法にあわないかと思うのだ。
そういえば、この小説の冒頭シーン、牛を飲み込む幻術だが、これって夢枕獏でも使われていたはず。

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