ペルシャ高原の東、プシュト山脈をのぞむ町メナムが舞台。このメナムがどこかは不明。大鷹汗ボルトルの求愛を拒み続けるメナムの姫ナンがある日街で幻術師アッサムを目にする。アッサムはボルトルの暗殺を請負い、ある夜宴でアッサムはボルトルの眼前に姿を現す。そこでアッサムはボルトルを10日以内にボルトルを殺すことを宣言し、城をあとにする。
ナンは街でアッサムを訪ね、アッサムの術で経験したことないのない快楽を得、夢現ですごす。ある夜、ボルトルは夜陰に乗じてナンの寝室に行く。ナンはまだ幻術のとりこになっており、傍にあった護身用の短剣で蛇を刺すが、それはボルトルの上膊部だった。ボルトルはそこでアッサムがいることを悟り、短剣でアッサムを斬りつける。ボルトルとアッサムは死闘を繰りひろげるなか、アッサムはナンのこころに語りかけ、望楼にいくように言う。そして愛を告白する。望楼にのぼったナンを待ち受けていたのは洪水だった。メナムの街は洪水にのまれ、あとかたもなくなる。その後のナンの消息は知れず。
幻想小説としては、もう一歩といったところだが、発表当時では、日本人が一人も存在しない、エキゾチックな内容で、斬新だったよう。
この小説のラストでナンの消息がわからなず、しかし「悪魔(シャイターン)の石」がテヘランの博物館に収蔵されていると書く。このあたりでロマンをかきたてられるもので、ひとつの石から僕らの意識は過去へとぶ。ほんとうにこの石が存在するのか、テヘランの博物館とは、どこのことかもわかならいが、ストーリーだけでなく、石そのものの存在が妖しいものとなる。そもそも登場人物がみんな真に存在した人なのか? メナムってどこだ? なかなかにくい書き方かと思う。
この話はなにをもとにしているのか。『集史』あたりからか。話自体は、どうってことないけれども、司馬さんの中世モンゴルへの熱い想いを感じる。
もう20年近くまえに読んだことがあるが、すべて覚えていなかった。はじめて読んだ感じがした。
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