2020/05/04

「ある不倫」司馬遼太郎短篇全集三

明子は、中年にさしかかり、私の人生はこのままでいいのかと悩んでいた時、松田秀夫という一風変わった公務員と不倫をする。駆け落ちをして、すぐに金がつき、それまであった舞台の主人公のような気持ちも失せ、家に帰る。旦那は明子を責めることも殴ることもしない。
んーどうでしょうか。これは駄作でしょう。戦後の夫婦関係を描こうとしているのだけれど、いまいちね。冷めきった夫婦がラストで明子をおさえながら狂おしいセックスで終了する。
戦後も遠くになって、新しい生活が流行りだした時期、まさにミッチー・ブームの時代。大衆社会の幕開け的な時代。
そこには、思い描いた理想とは違う現実があって、でも結局は日常に埋没せざるを得ない弱さをもつ大衆。
まあ、司馬さんにとっては一番嫌いな種類の人間像でしょう。
司馬さん、あんまりこういった「純文学的」なものはお得意ではないかな。「白い歓喜天」も夫婦がテーマだったが、これもどうもよくない。


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