A Recital of BACH and HANDEL Arias
Kathleen Ferrier
The London Philharmonic Orchestra
Sir Andrian Boult
Decca, LXT5383, MONO
キャスリーン・フェリア。1953年に亡くなっている。このレコードは再発盤で1957年にリリース。オリジナルは亡くなった年の1953年にリリース。録音自体は1952年。指揮はサー・エイドリアン・ボールト。
恥ずかしながら、ぼくはこの歌手を知らなかった。
レコード店にディスクユニオンに行って、なにげなく手にとって、DECCAでMONOかーと思い、曲目もみたらなかなか渋い選曲。ということで購入。
曲目は以下。
Qui sedes ad dexteram Patris, miserere Nobis(Mass in B minor)/ミサ曲ロ短調より「父の右に座したもう主よ、われらをあわれみたまえ」
Grief for sin(St. Matthew Passion)/マタイ受難曲より「懺悔と悔恨が」
All is fulfilled(St. John Passion)/ヨハネ受難曲より「事は果たされた」
Agnus Dei, qui tollis peccara mundi, miserere nobis(Mass in B minor)/ミサ曲ロ短調より「神の子羊」
Return, O God of hosts(Samson)/オラトリオ『サムソン』より「万軍の主よ、帰りたまえ」
O thou that tellest good tidings(Messiah)/オラトリオ『メサイア』より「よきおとずれを伝える者よ」
Father of God(Judas Maccabaeus)/オラトリオ『マカベウスのユダ』より「天なる父」
He was despised(Messiah)/オラトリオ『メサイア』より「彼は侮られて」
フェリアは正規の歌手としての教育受けておらず、電話交換手をしながらコンクール優勝したもよう。エマ・カークビーも学校の国語の先生だった。スーザン・ボイルの元祖のような人。
大学で音楽を学んでいなくても、クラシック音楽の業界で活躍できるなんて、いい時代だなあ。イギリスでは定期的、この手の人を発掘する文化でもあるのか。
ワルターとのマーラー『大地の歌』が名盤のようだが、ぼくはマーラーをほとんど聴かないから、どうしよう。
それで、今回のレコードだが、泣けてきそうなぐらいいい。
マタイ受難曲からは第六曲のアリアというのが渋い。古楽器スタイルの演奏や歌唱が主流のいま、フェリアの歌い方は時代を感じさせるのだけれど、フェリアの声は透明感があるからしつこくない。
次のヨハネ受難曲からだとふつう第七曲アリア「私が犯した罪の縄目から」を選ぶところを、「事は果たされた」を選曲しているところがいい。歌の内容は、イエスの死を歌っているが、歌詞は「事は果たされ、悲しみの夜は終わり、勝利がやってくる」といったものだが、始終暗い。悲しみしかない。
さてヘンデル『サムソン』のアリアは沁みるわあ。『サムソン』って選民思想丸出しで、ヤハウェの押し売り状態でほんとうにひどい話だけど、ヘンデルが手を加えると高尚な神学的な解釈が表にでてこないで、物語としてフューチャーできていて、うまく換骨奪胎している。
フェリアの歌声は、太く力強い。そしてなぜだか慰められる。暖かくて、いい声を持っている歌手だったんだ、もっと多くの録音を残してくれていればと思う。
イギリスでは、エマ・カークビー、スーザン・ボイルなんかと同様に透明感をもっている歌い手が好まれるのかな。
惜しむらくは、このレコードがアリア集ということもあり、曲それぞれの物語性が発揮さていないところで、これは仕方がない。マタイにしろメサイヤにしろ、全曲を通して聴くとフェリアの良さが十二分にさらに理解できると思う。
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