2020/05/02

「けろりの道頓」司馬遼太郎短篇全集三

道頓は秀吉に自らに伽をさせているお藻を譲る。
「関白に声をかけられたぐらいで、あるじはよろこびすぎる。天下人と地下人のちがいは、大慾があるかないかということにすぎぬわい。あるじは、自分の値うちを知らなすぎる」と道卜は思う。
道頓、東横堀川と木津川を結ぶ東西に堀をつくるように命じられるが、秀吉は死んでしまう。そこで道頓は自ら金を集めて堀をつくることにする。
その際中、お藻が労咳で死んだことをしり、そして秀吉に一度しか愛されなかったことを知る。
「そんな所へお藻をやったわしがわるい。わしの屋敷におれば人の世が楽しめたものを、ほんまにお藻にむごいことをしたなあ」と泣きながら咆えた。
道頓は大阪の陣に、秀吉に恩があるといって、参加しそこで死ぬ。

道頓という人となりの描き方はさることながら、冒頭秀吉が「善い、善い」町をあるく描写がまたいい。
大阪という町が、まさに秀吉を体現しているかのような活気と、秀吉という欲張りさが大阪を表象している。そしてその中で欲のない道頓、ということだ。
にしても道頓堀の由来が人物からというのは知りませんでした。
ちょっと愚痴をいえば、現代ではいつのまにか金を稼ぐ人が「えらい人」になっちゃった。なかなか下品な世の中です。

0 件のコメント:

コメントを投稿