2019/03/09

『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』河合香織 文藝春秋

ノンフィクションとしては駄作。あまりにも表層的すぎる。
しかしこの裁判は胸糞が悪いもので、本のかなでアメリカなら勝訴していたとかいう弁護士の言葉があるが、こんな裁判自体ありえない。母親の訴訟を起こした理由に、医師が生まれた子に謝ってくれなかったからだという。といっても本書では、訴訟を起こした理由は混乱している。医者と患者との非対称性が生み出した訴訟であるけれど、ホントに必要な訴訟だったのかな。
生まれた子供が障害を持っていて、生後間もなく苦しんで死んだ、それでそんな子供を産ませた医者を訴えるってそんなのありなのか。生まれるべきではない障害を持った子が生まれ、苦しんでしまった、それを医者のせいにできるのか。その後の母親の様子で障害児をかわいく思えるようになったとか心境の変化があったようだが、いやいや、そんなの免罪符にならない。母親は医者の態度が急に変わって、息子が死んだとき謝りもしなかったから訴えたといっているが、まあ引き金はそんなところなのだろう。誤診による予期せぬダウン症の出産と合併症による死を目の当たりにして、感情の行き先をどこかに求めるものなのかもしれない。
この出生前診断でダウン症と分かった場合、多くが中絶する。とういうよりもダウン症ならば中絶することを考えている人が出生前診断を行うということか。理由はダウン症児を育て養っていくことができるのかが不安だからだ。もしかしたら親よりも長生きをする。そんなとき誰がわが子の面倒を見てくれるのか。他にも体裁もあるだろう。人は障害者を悪いと思いながらも奇異な目でみてしまう。そんな気持ちを親は知っているのだ。だって自分もそうだから。だから中絶する。
著者は、誰も責めないし中立にたった書き方をしている。僕はそれは無責任だと思う。人それぞれ考え方は違うからって、それぞれ尊重する必要もない。
まあ、ノンフィクションでもあり、実際この両親と医者との間で何が起こっていたのかを本当のことはわからないが、ノンフィクションの通りであれば、僕はこの母親に批判的だ。

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