2019/03/30

北方謙三版『水滸伝一 曙光の章』3

「地暴の星」「天微の星」「地囚の星」「地霊の星」まで

魯智深は王進に会いに行く途中で、鮑旭という盗賊に出会う。鮑旭は生まれてから、盗みと殺しをしながら生きてきた。魯智深は彼に何かを感じ、王進に武術と教育を教えてもらえるように頼む。王進は快諾する。鮑旭は初めて人間のぬくもりを感じる。
王進のもとを去ったあと、魯智深は武松に会いに京兆府に行く。そこで晁蓋と阮小五と偶然会い、武松を含めて酒席となる。武松は蜂起への長い道のりのなかで、鬱屈し始める。いつはじめるのかと。
史進は父子礼が死んだ後、家督を次ぐがみずからを保正の役割ではないと考えていた。また、史進は自分の力を使う道筋がなく鬱々としていた。そして魯智深があらわれ客のもてなしをうける。そんななか盗賊が史家村を通りたいとあらわれた。朱武、陳達、楊春の3人を首領にいただき、役所を襲うという。史進は陳達と一騎打ちとなり捕縛する。その後、朱武と楊春があらわれ、陳達を解放してほしいと懇願する。史進は彼等との対話のなかで自らの進む道をぼんやりと認識しはじめる。史進は陳達を解放し、彼等と交友をもつようになる。魯智深は史進と別れ、朱武に会いに行く。そこで朱武に史家村を役所が襲わせることを伝える。そのことで史進が自由になると考えた。
梁山湖で店をかまえている朱貴は、梁山湖の首領の王倫と科挙をうけたときからの知り合いで、王倫と朱貴は試験に失敗し、王倫は世の中の不条理に怒り、政府の荷物などを盗む盗賊になるが、時がたつうちに役人の荷物ではなく商人を襲うようになる。そんな王倫に朱貴は幻滅し始めている。
宋江は梁山湖を手に入れるために、朱貴を引きこもうと考えている。宋江はわざとらしく呉用に官僚批判をさせるなどして、朱貴の心を揺らす。
盧俊義は塩の道を完成させるべく、忙しく動いている。しかし、通行書を用意するのに苦心する。花栄はそこで自分の軍で密輸することを提案する。しかし何度も使える手ではないこともあり、花栄はバレれば逃亡することを決心する。
安全道を逃亡させる任務を受けている林冲は、滄州の牢にいる。林冲は安全道のために過酷な木材の伐採をしながら薬草を採取する。安全道はどこか王進に似ているところがあると林冲は思う。安全道は医のために生きる人間だった。そんな安全道に友と呼べる盗人白勝が病気になる。安全道は白勝と滄州の牢に入る前から共に知り合いで、共に生きてきた。安全道は林冲に頼み白勝を診たいという。すると白勝は腸の病になっているという。林冲は高俅からの刺客を殺したため、急遽脱獄することとなる。そんななか白勝はすぐにでも手術が必要だと安全道はいう。手術のために安全道は脱獄を決意する。
無事に安全道を脱獄させた林冲は安全道をともなって宋江のもとへ帰る。
宋江が述べてきた言行禄を多くの人に読んでもらうように木版印刷して配ることにする。その表題を「替天行道」天に替わって道を行う、とした。武松は何かを思い詰めているようで盧俊義は一度田舎に返すことにした。いずれまた戻ってくることを期待して。

もう十年以上前に赤木智弘が「希望は戦争」という言葉で、一悶着あったが、そんなに目くじら立てて批判することでもないと当時は思っていた。実際、アニメ、漫画、小説では戦争ものが多く、そこでは戦争のロマンが語られている。赤木さんが「希望は戦争」といったとき、多くの人がそれに共感した。批判者は戦争は悲惨であることを述べるが、そんなことは問題ではない。そんな悲惨な場にも自分を置きたいという気持ちなどもあるのだから。赤木さんは、戦争のロマンを語ったわけではないが、多くの人間がもつ戦争への甘い誘惑といいうのがある。
この水滸伝でも、晁蓋は単なる世直しを目指しているのではなくて乱世を希望しているとこもあるように描かれている。
まあ、単純にロマンを語るとよろしくないので、乱世を望みながら世の安寧も同時に願うのが大事。人間というのは不合理な生き物であることで。
とりあえずこれで一巻目終了。

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