2020/04/08

『他人の顔』 安部公房 新潮文庫

連続して安部公房を読みなおしているけど、この『他人の顔』って、こんなに退屈だったけ。大学生のときに、のめり込んで読んだ記憶がある。とはいってもほとんど内容は忘れてしまったけど。
で、再読、はじめの4分の1ぐらいまで、そうですね、仮面を作るところぐらいまでは、まあいい。
しかし、そこからが正直つらい。読んでいて、主人公の自分語りが、もう冗長で、だらだらとどうでもいいことを語るわけ。我慢して読んだけど、ほとんど頭に入ってこず、ただ字面を追うだけのこともしばしば。顔は人間同士の通路だという。そこから人間は外見なのか中身なのかといった話になるんだけど退屈だ。自己批判と自己肯定が繰り返される、その葛藤が読みどころなのだろうか。
ストーリー自体、ケロイドの顔を隠すために仮面をつくって、自分の妻を誘惑して、云々、とまあいい感じです。
実際のところ、K高分子科学研究所や古生物学者の話、仮面を作る材料や段取り、ブラン某の顔の形態論なんかさもありなんと思わせる説得性があって、安部公房らしさというのがあるんだけども、顔についての考察の段になると、観念論が披歴されていく。
ロマンティック学生の心の傷を癒してくれるだろうけど、すでにそんなものを卒業し現実を受け入れた諦念の塊であるぼくには世迷いごとにしか読めなかった。
観念論をやめていれば、プロットはおもしろいと思う。ラスト、カミさんが失踪しちゃうけど、そのカミさんの手紙も悪くないわけで。そして、主人公が見た映画のあらすじなんかも、けっこういい内容なわけです。妹が海に消えていくところなんか美しいと思うよ。
なんかもったいない感じ。

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