2020/04/22

「丹波屋の嬢さん」司馬遼太郎短篇全集三

丹波屋の嬢さん

大阪同心の善七は正月明けに喧嘩をすることになるが、相手は大人数。佐吉にその話をしていると、善吉が思いを寄せているお実以が立ち聞きしていた。お実以は善吉に喧嘩屋太蔵を会いに行くように勧める。
司馬さんのすごいのは、ここでの主な登場人物は4人、それぞれの個性が短い短篇で際立っていることで、不思議なところです。凝縮された文章、ちょっとしたセリフがよく効いている。
太蔵の描写なんかも、思わず笑っちゃう。
佐吉に対して下座で平つくばって、鰻谷の口入屋、人呼んで喧嘩屋である口上があり、この太蔵のふてぶてしさと、そのおかしみがにじみでている。
佐吉だけでなく太蔵もお実以に惚れていたが、お実以は彼らをあざむく。
「女にだまされた男が三人、ここで六法をふんだところで物笑いの種や。それに、こっちはに得物もない。……ここにいる神木善七というお人は、大阪同心ながら、これでも幕臣や。幕臣がうぬらにだまされて、幕府の不利になることを働いた。というが、これは真赤なウソや。だまされはしたが、そんな天下国家のことやない。たかが女にだまされた。しかと言うが、これは色恋の沙汰や……色恋事の勝負は、他愛もない浮世の茶漬話でな、眼の色かえることもない。じゃによって、こちらは笑うて退散してこます。こっちもそっちも、刃物を引けい!」

大した話でもないのにいい話。ちょっといじれば落語になるよ。

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