Johannes Brahms
Klavierkonzert · Piano Concerto No. 1
Maurizio Pollini, Karl Böhm
Wiener Philharmoniker
Deutsche Grammophon, 28MG 0006, 2531 294, 1980
ベームとポリーニによるブラームスのピアノ協奏曲第一番。安く買えたのでよかった。
第一楽章、ベーム指揮によるオーケストラの導入は、やはり往年のベームらしく重厚かつ、しっとりしている。
が、そしてポリーニのあのメカニカルなピアノが始まる。ポリーニのピアノの安定感がいい。ブラームスの音楽がもつ、どこか童貞くさいところが、ポリーニのピアノで換骨奪胎できている。なので、人によっては「浅く」感じられてしまうのも否めない。ただそれがポリーニのよさなんだとは思う。とくに第三楽章はポリーニのピアノがいきいきと、力強い打鍵で、繰り広げられていく。これはやはりポリーニのピアノ技術があってのものだろう。感情は抑制されており、ロマン派の音楽がロマンティックに聴こえない。
内に秘める童貞の執念というか、鬱屈した気持ちが、ブラームの音楽を作りあげていて、それはもう僕が童貞だったころはブラームスに耽溺したものだ。だから昔はポリーニの演奏を好きではなかったし、求めていた音はもっと悶々としたくねくねした演奏だった。かつてブラームスのピアノ協奏曲第一番はアラウとハイティンクのものを好んで聴いていた。ハイティンクの指揮では導入部が、もうなんというか重々しくって、感傷的な感情とよくリンクさせていたものだ。僕って不幸だぜ、みたい感じで。
この演奏はピアノについてはその油っこさがない。しかしオーケストラにはそのピアノに負けないくらいの情念が宿っている。かといって過剰にならないのがベームのいいところだ。節度を守り、自らを律する音楽を構築している。なかなかな快演だ。いまの僕にとって、この「浅さ」がちょうどいい。
ああ、こころ一すじに、ブラームスにうちこめる、そんな日がふたたび来ないものだろうか。
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