2019/02/19

『流亡の伝道僧』司馬遼太郎短篇全集一

『流亡の伝道僧』(1952)

満州で会った、真宗の僧侶のお話。元兵隊で「人として人を殺す権利」なんかないと思い詰めて、軍を辞めて出家。その後中国人、モンゴル人に説法して旅をしていたという。その説法がなかなか独りよがりで、相手が聞いているのかどうかは頓着しない。風のうわさで、シベリアからの引き揚げの際に、それっぽい人間に偶然会って拳銃を突きつけられながら、病人を車にのせるように頼まれたという話を聞く。その後の消息はない。
1952年といえば、シベリア引揚げが歴史ではなく、まさに昨日のことのように近い出来事であったわけで、当時けっこう生生しい話題だったのかなと思う。この僧侶の人間嫌いが司馬遼太郎の人間嫌いとなんか一致すると思う。

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