2020/03/31

『方舟さくら丸』 安部公房 新潮文庫

やはり安部公房の小説は、なんだかんだいって演劇だな。
描写もなかなかおもしろい。
「ペダルを漕いでみるふりをして、女に接近し、ぼくも負けずに手を出した。尻叩きというより、尻撫でだ。……女は…前かがみになってくすくす笑った。反対側では昆虫やが掌をひらいて待ち受けている。女の尻を使ったハンド・ボールだ」
ひどい描写だよ。


いろいろと疑問が残ります。
便器の隠喩はなんなのかな。船長は片足をつっこんじゃうけど。

半永久的に生きるユープケッチャって一体なに。足はなく、自分の糞を食べて生きていくって。

オリンピック阻止同盟ってなんの隠喩なのか。シンボルマークは、まん丸で緑色の豚。デブとその仲間が中心で
筋肉礼讃反対!
ビタミン剤反対!
国旗掲揚反対!
を叫ぶ。 強健な肉体のために国旗が掲げられ国家が歌われる。それは一部の人への差別ではないか。ぬおーーー。そうだよなー!

サクラが突然起き抜けに、奇声を発し、
「『アッカン、プッカ、アッカン、プッカ』
したい事をするのと、したくない事を拒むのとは、似ているようでまったく別のことなのだ」(227−228)
こりゃ、なんだ。サクラの性格はなかなか見えにくいのだけれど、いきなりこんな奇声を発するような感じじゃない。

サバイバルゲームについて。痛風病みの老人が最後発作で死んでしまう。老人に従っていたプレイヤーも保留となる。なんのこっちゃ。

ほうき隊をとりしきる副官も、なんだか頭は切れるようなんだけれど、狂気と理性の狭間にいる感じです。
「猪突先生の指導のもとに自主独立の老人王国の建設を夢みてまいりましたいや、私ども老人王国という言葉は用いません。[ほうき隊]では老人という言葉は差別用語に指定しております。……私どもは棄民t読んでおります。……年齢とは無関係な概念なのであります。……正式には《代表棄民王国》なのであります。さいわ実現の日が近づいてまいりました。ほどなく空からウラニウムやプルトニウムの業火が降りそそぎ、そこに居られる千石さんの申されるところの御破算の時が迫っているのです。」(317)
なんだか、出口なおみたいな感じになっている。
そして、モグラこと船長の「生きのびるための切符」のように副官は電話帳で、適当に選別していく。どちらにせよ、裁判なしでの死刑宣告なのだ。

なぜサクラと女は方舟に残ることにしたのか。
なんてたって女は船長に
「わたし、空が見えないと駄目なんだ……私にも口に出して言ってみる呪いがあるんだ。いつだったか、空を眺めていたら、空気が生き物に見えてきたのね。樹の枝は欠陥にそっくりでしょう。形だけでなく、炭酸ガスを酸素に変えたり、窒素を九州したり、しゃんと新陳代謝しているわけだし、……風や気圧の変化は空気の筋肉の運動で、草や樹の根っこは指や手足ね。棲みついている動物は、血球やウィールすや大腸菌で……」(275)

最後、それまであったグロテスクさから解放された感じがありますね。
「合同市庁舎の黒いガラス張りの壁に向かって、カメラを構えてみる。二十四ミリの広角レンズをつけて絞り込み、自分を入れて街の記念撮影をしようと思ったのだ。それにしても透明すぎた。日差しだけでなく、人間までが透けて見える。透けた人間の向こうは、やはり透明な街だ。ぼくもあんなふうに透明なのだろうか。顔のまえに手をひろげてみた。手を透して街が見えた。振り返って見ても、やはり街は透き通っていた。街ぜんたいが生き生きと死んでいた。誰が生きのびられるのか、誰が生きのびるのか、ぼくはもう考えるのを止めることにした。」(374)

最初から最後まで疑問だらけですが、これらは明確で論理的な回答もないと思われ。
と、まあいろいろと安部公房的な要素がたんまりで「豚の死体無料贈呈、腸詰め製造業者殿」とかも、安部臭がすごいわけです。ただ、ちょっとやりすぎたところもないわけではない。
全体的に安部公房の小説では、荒唐無稽な内容にみえて、読みやすい。

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