2019/11/29

「泥棒名人」司馬遼太郎短篇全集二

盗賊江戸屋音次郎は海鮮物問屋に泥棒に入った時、玄達と出会う。そこで長屋の隣に引っ越してきた易者だった。
音次郎は、大坂にきてお蝶を女房にもらうが、その掛け合いがおもしろい。
音次郎は玄達に、大阪城にある火切り国元を盗む勝負をもちこみ、音二郎は大坂城に忍び込み盗み出すが、じつはそれは玄達が前もって仕込んだものだった。
玄達は音二郎に女を盗み出してほしいという。玄達はみずからの家系や生い立ちをはなしはじめる。
役小角が信貴山で夫婦の鬼を大峰山に住まわせる。その鬼の末裔が自分であるとつげる。北鬼の所領は熊野の奥にあり、誰も嫁ぎに来ない、だから代々嫁を盗んできた。女はあまりに山奥で自分の境遇をあきらめるのだという。
音次郎は玄達の申し出を受け、黄檗寺にいる女を盗みに行く。
「しかし、なんだな。お前はきっと佳い女だろうな。闇の中でもわかるんだ」
女の細引を締めながら音次郎は言った。

落ちは途中で気づいてしまう。
盗むことが愉しくて盗む、っていうのもいいですね。泥棒にたいしも情が湧いてしまう。
少し物足りないところがある。
例えば、ラストの落ちでもう少し音次郎の開き直り感がほしいしところかな。
音次郎とお蝶の会話は、司馬さんのユーモアが光っている。
大阪弁の司馬遼太郎の文章を読んでいると、ある種落語を思い起こさせる。
そう、漱石の『吾輩は猫である』の「オタンチン・パレオロガス」のくだりのような感じ。

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