2019/11/26

「難波村の仇討ち」司馬遼太郎短篇全集二

佐伯主税は出合茶屋でお妙と関係をもつが、じつはこのお妙は主税の兄の仇討ちの相手奴留湯佐平次の妹だった。主税は兄は佐平次の口車に乗せられてしまい、のちに不正がばれてしまう。さらに佐平次を斬ろうとするも返り討ちにされる。
主税は佐平次を討とうとするも、佐平次はのらりくらりとかわしてしまう。さらには馬鹿にされる。江戸や田舎の者は殺伐としている。仇討ちは野暮の骨頂だと。
佐平次は佐平次で仇討ちの許し状を主税から金で買おうとする。
お妙は、時折主税のもとに行っては、一緒になってくれと頼み込む。大坂の心意気をしゃべる。
「大坂の男はんは、恋でならしにまっせ。諸国の人から、大坂者はえげつないといわれながら、恋のためなら損得なしに死ねる心根を持ってます。田舎のお侍は、そうは行きまへんやろ。死ぬときは、必ず損得がつきます。お主のために死んだら、孫子に禄高がふえるてら、何位てら言わはって」
時代は幕末、佐平次は横浜から帰ってきた。主税は佐平次を討とうと佐平次の家に行く。が、佐平次に蹴り倒され、
「この亡者め。時代が変わったわい。岡山藩も、幕府も、二百五十石も紙クズになりはてた。これからはあきんどの世じゃ。」
と言い、主税にお妙をもらって、米国に遊んでこい、と勧められる。
主税に残されていたのは、岡山藩でも実家でもなくお妙だけだった。

なかなかコミカルで、お妙の存在がいい。ところどころでお妙は主税の側にいて、おかしみがでる。敵の妹と色恋ざたをしながら、協力者のはずの与七にも百両で手を売ったほうがいい、仇討ちはつまらんといわれる。
主税には鬼気迫るものがあるようには書かれていなくて、たんに頭の固い、融通のきかない田舎者として書かれている。
司馬さんの大阪弁が軽妙で、武士をどこか馬鹿にした感じがとってもいい。

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