2019/11/28

「和州長者」司馬遼太郎短篇全集二

欣吾は嫂の佐絵と関係をもち、睦言を言う。自分のせいでこのような関係になったとか。
事が終わり、嫂が部屋に戻る。欣吾はそのまま寝るが、突然兄采女が入ってきて佐絵が死んでいる、そして佐絵は誰かに犯された痕があるという。欣吾はバレるのではないかと心配するが、兄は疑っている様子がなく、さらに体裁から病死したことにする。
中間の団平が、初七日の日、佐絵と関係をもったものを集める。団平、采女、小間使いの源右衛門、欣吾が集まり、采女は佐絵は不義を働いていたことを知る。
源右衛門は佐絵を無理矢理犯しており、佐絵はその口直しで欣吾と寝ていた。ただ佐絵が死んだ日はめずらしく順番が逆になり、激しく犯された佐絵は、心臓も弱かったこともあり、死んでしまう。
関係をもった順に座が決められる。和州のしきたりだという。そして四つ徳利に一つ毒が入っている。それを上座から選び、飲み干していく。その後、お開きとなり、欣吾は自分が毒入りを飲んだのではないかと恐れる。
のち、死んだのが団平で、采女から団平が酒盛りの際に述べていた、佐絵を最初に抱いたのは自分であると言うのは作り話であることを告げられる。そして、団平は佐絵に恋をしていて、自ら毒をあおって死んでいったという。
采女は家督を欣吾にゆずり、隠居することを欣吾に告げる。采女は最後、欣吾を蹴り飛ばす。

和州は大和のことだが、おそらく司馬さんは大和人である団平の損得のないまことの恋心を描こうとしていたと思うが、あまりフォーカスできていない。
それでも文章がいいので、読ませる読ませる。司馬さんの文章というのは、どこか明るいし、さっぱりしているので、この手の男女の情愛を描くには苦手かなと思う。
団平の佐絵への思いを、もっと妄執的なもので描いていたらと思う。どろどろした情念とか、一方的な団平の佐絵への思いを描写していたらと思う。
でもそれをすると司馬遼太郎ではなくなってしまうけど。

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