2019/08/27

『戦国の壺』司馬遼太郎短篇全集二

『戦国の壺』

細川忠興、号を三斎、が持っていた壺、「安国寺肩衡」はさまざまな人の手に渡り、世の名器となって、忠興同様に翻弄される。そして忠興の手に戻ってきたとき、老いた忠興の胸に迫るものがあった。
忠興は西行の歌を思い出す
  年たけてまたこゆべしと思いきや、 命なりけり佐夜の中山
その後、忠興の子の時代に豊前で飢饉があり、その際にこの安国寺を庄内藩酒井忠勝に売却して民を救った。
それから壺は信州上田城主松平家へと渡り、そして大正になって松平家から入札にだされ、落札価格はわずか二百円だったという。

とても短い作品。世の変遷の儚さがある。人生は流転するもの。
モノとはかくあるものであると、誰もが知っていながらも、人間、哀しくもモノに振りまわされてしまうのです。茶器はしょせん茶器。しかし、それが世を乱すこともあれば、救うこともあるようで。

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