2019/08/12

『伊賀源と色仙人』司馬遼太郎短篇全集二

『伊賀源と色仙人』

大阪の丼池で商いをしていた伊賀源太郎は不渡りをだして、西成区山王区の天国荘に逃げ込む。そこで色仙人と出会う。色仙人は女乞食のクマバチとやっている最中だった。
色仙人の素性は誰も知らない。色仙人は伊賀源の見込んで地面に落ちている金目の物を拾うジミ屋家業を教える。そしてつぎにソーイ屋を教え、子供玩具の設計図などを手がけていった。
色仙人は、もう教えることがないと、もう山王からでていくように伊賀源に言い、最後にクマバチの身体にマッチの灯りを照らしながら、秘法をさずける。色仙人はストッキングの切れ端をクマバチの身体にあてるように言う。
何が何だかわからず、伊賀源はアパートに戻り一日思案して閃いた。
伊賀源は前から思いをはせていた画廊に務める時子のもとに行き、裸になってくれと頼みこむ。秘法とは女性向け下着のデザインだった。
伊賀源が色仙人に報告しにいくと懐から二十万円ほどの札束をわたす。
「山王町の色仙人といわれた俺や。それぐらいの金はある」といってクマバチとともに闇に消えていった。
昭和三十一年以降の下着ブームが席巻するにいたる。

「丼池界隈」「大阪商人」と同じで、猥褻さがいいですね。
この小説で「マッチ売りの少女」という、マッチの灯りで女の秘部を照らすという卑猥な遊びについて書かれている。
昔、もう20年以上まえだが、この手のAVを見たことがある。僕がまだ小学生か中学生のころだ。タイトルもたしかそのままで「マッチ売りの少女」だったか。そんな遊び、正直AVの特殊な設定でしかないと思っていたが、まさか司馬さんの小説で再会するとは。あのAVはノンフィクションだったのか。
地見屋なんかも、柳家金語楼の「身投げ屋」でしか知らなかった。そんな商売がほんとにありえたのが、なんとも時代だなと思うわけで。
司馬さんもこういう話が書けたのだな。この感じ、現在で言えば、浅田次郎の世界感のようで、ヘミングウェイのようなかっこよさもあるわけです。
猥雑さと人情が混ざり合っている。

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