2022/01/31

『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』 宮本太郎 朝日新聞出版

ベーシックアセットとは何か。
ベーシックインカムやベーシックサービスは現金給付かサービスに絞りこんでいる。それに対してベーシックアセットは現金給付やサービスだけでなく、コモンズも含まれる。
アセットとは「有益な資源」の意味。これは私的、公共的なものを含むが、ベーシックアセットはさらにコモンズが含まれる。
コモンズとは何か。「誰のものでもなく、オープンで、多くの人がその存続に関わるが、その分、誰かが占有してしまう場合もあるようなアセットである。……ベーシックアセット論におけるコモンズは、コミュニティ、自然環境、デジタルネットワークなどが年頭に置かれている。」(23)
特に本書で重要視しているのが「社会とつながり続け承認を得る(そのことで自己肯定感を得る)ことができる、コミュニティというコモンズである。」(23)
政府が所属するべきコミュニティを割り当てる、という性格がないわけではないが、「コミュニティがアセットとなるということは、……包括的相談支援のサービス等を受け、人々が貴族したいと考える居場所や職場をみつけ、そこに身を置くことで元気を回復できる、ということである。」(24)

現代日本の福祉制度は必ずしも良いとは言い難いところが多いが、それでも日進月歩で拡充してきた。しかし、そもそも前提に男性稼ぎ主がある。
生活保護はなぜ「選別主義」のような性格をもってしまたたのか、それは社会保障給付へ充当できる財源も抑制されているからであり、また低所得者層には給付が向けられていない。
税と社会保険料が使われているのは主に、年金、介護、医療の分野に絞られる。これらは保険料が確実な歳入としてあり、そのため財源としては潤沢にある。しかし生活保護は税金によって支えられているため財源も抑制されていく。
そのため生活困難層が、社会福祉制度から漏れてしまいかねないものとなる。
親の介護、子供の介護などは、働く世代に重くのしかかり、非正規雇用で低賃金で働かざるを得ないケースが多い。

ベーシックインカムについてがなかなか盲点。ベーシックインカムは基本的に全国民に給付することが目的であるように見えるが、そもそもが財源論の問題なのだと。財源をどこからもってくるかで、国の福祉の方向性が決まってくる。所得税からなのか、産業界への補助金などをゼロにするかなどどこからどこからかでベーシックインカムの性格が変わり、そして国の福祉制度の性格も変わっていく。

いろいろと勉強になりますね。
すでに限られたパイをいかに配分していくかが重要になっており、また各セクションに多くを割けない状況でもあるなかで、アセットという考え方は魅力的だが、はたして日本でこれが実かどうか。
日本はよくもわるくも個人主義が強い。地域に密着して活動することにも弱い。
どうなることやら。

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