2021/05/01

『風と共に去りぬ』 第3巻 マーガレット・ミッチェル/鴻巣友季子訳 新潮文庫

だんだんおもしろくなって参りました。
タラにようやく戻ったスカーレットたち。スカーレットは過去を二度と振り返らないことにする。エレン・オハラの教えを振り払い、手に豆をつくりながら生きていく。それでもタラへのスカーレットの思いは変わらなかった。
スカーレットは泥棒に入ったヤンキーを銃で撃ち殺すし、ヤンキーどもがタラの屋敷から略奪しにきたときも毅然と対応していく。メラニーに対してもどこか親近感を抱く。
スカーレットは相変わらず現実主義者で、ケネディ・フランクがやってきてスエレンと結婚は経済的に迎える用意ができてから結婚することをスカーレットに伝えるが、スカーレットは一人口減らしになると期待していたのにとがっかりしたりする。
死んだと思われたアシュリーの帰還したときが、またおもしろい。メリーがアシュリーに抱きつき、スカーレットも有頂天になってアシュリーに抱きつこうとすると、ウィル・ベンティーンがスカートを掴んで止めるところ。(213)。とってもコミカル

スカーレットがアシュリーに金策を相談にしにいくと、アシュリーは自分には助けられないことを伝えるところ。ここはなんだかんだ、いい場面で、アシュリーという内気な性格の持ち主が、戦後の南部におかれた現実になかなか向き合えない状況が述べられる。スカーレットのような現実主義者とアシュリーのような内腔的な人物とで、戦後の生き方が明確に分かれていく。

「ぼくはずっと人付き合いを避けて生きていたろう。よくよく選んだ友人とだけ付き合っていた。しかし戦争に教えられてが、あれは夢の人々が済む自分だけの世界を築いていたということだ。人間が実際にどんなものかも戦争に教えられたが、彼らとどうやって暮していくかは戦争も教えてくれなかった。これからも分からないままじゃないかと思うんだ。とはいえ、今後、妻子を養っておくには、自分と似ても似つかない人たちばかりの世界でやって行かざるを得ないようだ。スカーレット、あなたは世の中の角をつかんで、自分の思うようにねじ伏せてしまえる人だ。でも、ぼくはこの先、世界のどこに居場所があると言うのだろう? だから怖いと言っているんだよ。」(240)

んー、よくわかりますよ。ぼくも自分がしている仕事がいかに自分の精神世界とあっていないか、常に苦痛を感じ生きている。まだぼくは生易しい世界で生きているからいいものを。
アシュリーは自分には何も残っていないが、スカーレットには赤土が残っていることを伝える。
スカーレットはそこで決心をする。

「一度は必死で追いかけた人だもの、家族ともどもひもじい思いをさせるわけには行かないわ。もうこんなこと二度と起こらないし」(254)

スカーレットはレットに結婚もしくは愛人になるためにアトランタへ行く。しかしレットは助けることができないことを伝えて、意気消沈した帰り道にケネディ・フランクに会う。そこでスカーレットは標的をレットからフランクに帰る。スカーレットはレットの助言をそのまま言うことを聞く。男を誑しこんでいく。フランクは経験不足でスカーレットの罠にはまっていく。スエレンの婚約者を奪おうとする。
マミーはスカーレットの選択を全面的に指示をする。マミーはなにもかも理解した上で黙ってスカーレットを手助けしようと端から決めている。マミーとスカーレットのやりとりなんかも非常にいいんですよね。

「おまえなんか、とっとと〈タラ〉へお帰り!」
「「無理に〈タラ〉へ帰そうとしたって駄目ですよ。あたしはいまや自由の身なんです」(399)

んーなかなかおもしろい。マミーは奴隷の身から解放されているが、それでもオハラ家に、スカーレットの傍にいることを決めている。
南部の敗北はどこか共感をしてしまうのが日本人の性でしょうか。

「敗戦してなお敗北を知らず、打ち砕かれてなお決然と背をのばして立つ人々だ。じつのところは、叩きのめされて無力な、支配下の人々だ。自分たちの愛する国が敵に蹂躙され、悪党たちが法を嘲笑い、かつての奴隷に脅かされ、男性たちは選挙権を奪われ、女性たちが侮辱されるのを、なすすべもなく見ているしかない。つまりは、記憶を堆積した墓場のようなものだ。」(414)

「旧世界のあらゆるものは変わってしまい、残るは形式だけだった。かつての慣習はいまも続いており、続けていかなくてはならない。いまの彼らに残されているのは、そうした形式だけなのだから。」(415)

そんななかでスカーレットはわが道を行くことを決心する。

0 件のコメント:

コメントを投稿