2021/05/25

『誓願』 マーガレット・アトウッド/鴻巣友李子訳 早川書房

全体的に砕けた感じの、前作のような苦しいさのようなものがなくなる。
いくぶんニコールの存在が軽く、台詞もなんか微妙だし、ギレアデ潜入前の訓練なんかの描写が、ちょっと微妙でありましたね。ドラマシリーズもあるから、このあたりの影響かもしれない。どこかヤングアダルト的なところがあった。

現代社会の負のスパイラル。自然災害、戦争、経済問題、社会問題など。
「人々は不安になっていた。そのうち怒りだした。希望のある救済策は出てこない。責める相手を探せ。」(96)
そしてできあがるのが、全体主義的な社会。皆がお互いを監視しあう社会。今回のコロナ騒動で、はっきりいと身に染みた。

リディア小母も"Tomorrow is another day"と。言ったりしている。侍女の衣服は赤だし「スカーレット」だし。ニコールの養母はメラニーだし。
まあリディアも目的のために手段を選ばないリアリストであるし。

抑圧的な社会で、言説はコンスタンティヴなものではなく、意味がずれていく。信仰心のある言葉が機械的になり、発話者の行為と一致しなくなっていく。
リディア小母が信仰の言葉を発しても、そこに読者はリディアの信仰を見いだすことはない。どこか皮肉めいていて響く。
この現象はリディアだけでなく、全ての登場人物にあてはまり、全登場人物の言葉が行為と一致していかない。
ただし、そこに社会への反抗が読み取れる。リディアとジャド司令官とのやりとりは象徴的になってる。

生殖が機械的な作業であるべきものとして規定されているようだが、実際に存在するのは女性という存在なんだが、その存在を否定し、思弁的な存在として捉えていく社会。
神を信仰することは反理性であるようだが、しかしそこで行われる統治のテクノロジーは理性的だ。だからこそ女性を産む機械として見なす。女性とは、こうあるべきである、という定言命法がいかに人間性を剥奪していくかがよくわかる。

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