やはり「草枕」は難しい。漢語なんか、注釈を参照しても難しい。芸術論云々も難しい。
ただこの本はそういう難しいところをうっちゃって、流れに身をまかせながら読むと、いい小説。ターナーやミレーの絵画のような淡さが通奏低音となる。
那美の「憐れ」ってなんなのか。さっぱりわからないけど、いいんですね。
久一も野武士も満州へ行く。にもかかわらず、その現実があんまり現実感もなく描かれている。
坊主たや源兵衛たちの交流にしろ、なんとなく浮世離れしている。
東洋的詩情、ここに極めりといった感じか。
「芭蕉と云ふ男は枕元へ馬が尿するのをさへ雅な事と見立てゝ発句にした。余も是から逢ふ人物を――百姓も、町人も、村役場の書記も、爺さんも婆さんも――悉く大自然の点景として描き出されたものと仮定して取りこなして見様」(12)
人間をなめている。
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