2021/02/14

『代議制民主主義――「民意」と「政治家」を問い直す』 待鳥聡史 中公新書

代議制民主主義を委任と説明責任で解き明かしている。まあそうだよね、この世の中分業だもの。
それよりか民主主義、共和主義、自由主義の枠でもっと書いてほしかった。
共和主義の特徴を
「「市民的徳性」が持つ政治的意義を強調したところにある。市民的特性の持ち主、すなわち他者よりも倫理的、道義的に優れており、それに基づいて社会的事柄に関して的確な判断ができる人物こそが、政治的影響力を持ち、公益あるいは公共善を追求すべきだということ」(25)
と書いている。起源をマキャヴェリと書いていることから、参考文献にあるとおりポーコックあたりがベースか。
共和主義は君主や貴族を否定しているわけではなく、徳性さえあれば別に君主でもよい、とするからで目的は公共善といったところ。
自由主義については二つに大きく分けて論じている。ロック的自由主義とマディソン的自由主義。
ロック的自由主義は経済的自由、君主から財産権の擁護。
マディソン的自由主義とは、党派間で競争させ、お互いを抑止させていくもので、エリート間での相互抑制でもあった。多様な政治勢力たちが勝ったり負けたりすることで、個々の判断が過剰でも全体として妥当に落ち着くという「多元主義」としている。
自由主義にせよ、共和主義にせよ、ブルジョワジーやエリートによる支配という見方は拭えない。しかし民主主義は「多数者の専制」でしかない。
このあたりのバランスは各国で調整しながら運営されていっている。
現在、ミャンマーの軍事クーデターが話題になっているが、ミャンマーでの民主主義とはいかなるものかを論じられていないし、さらに言えば民主主義だからいいというわけでもないのに、ああだこうだ言いすぎている。残念至極。
ということで下記、参考文献から

田中秀夫『アメリカ啓蒙の群像』名古屋大学出版会
ポーコック『マキャヴェリアン・モーメント』名古屋大学出版会

ポーコックは昔読んだけど図書館で借りたからもっていない。もう一度さらっとおさらいしたいけど、高いし、置く場所ないし、図書館で借りるしかない。
しかし蛇足ながら、待鳥さんは素晴らしい実績もあって、他の著作はよかったけど今回は微妙でしたね。なんか焦点が定まっていなくってふわっとしていた。

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