2020/10/01

『満州事変から日中全面戦争へ(戦争の日本史22)』 伊香俊哉 吉川弘文館

日中戦争と国際法の関係を論じている。本書、この観点を中心に論じていればもっとよかったのだけけれど。ちょっと物足りない感じ。
当時は帝国主義の時代で、食うか食われるかだったという言説があるが、これはけっこう怪しいもので、第一次世界大戦後にすでにヨーロッパでは厭戦ムードだったし、平和のための国際協調が芽生え始めていた時代でもあった。とはいっても各国思惑もあるのでうまくいかず、というところ。
自衛権の範囲なんかも自国の都合によいように解釈されていくが、これはまあ現代と同じですね。領土を攻撃されたら自衛権は明確だけど、領土の外だった場合はどうなるのか。満州事変、イタリアのエチオピア侵攻、ドイツのズデーテン侵攻やらが集団的自衛権がうまく働かなったことなんか、まあ現代でも同じでしょうか。
当時の陸軍だけでなく政治家も、国際情勢への敏感さがなくなっていたのかな。リットン調査団の結論は、日本に相当の譲歩というか、日本にとっては目的達成だったはずなのに、それを拒否する。
すでに何のため行動をしたのか。拡大路線をとるようになっていくのは、陸軍や関東軍、政治家の驕りだろう。
本書では、立作太郎や横田喜三郎の議論が紹介されている。けっこう興味深いものなのだけど、ちょっと物足りない。
現在の視点でみると立作太郎の主張は、「御用学者」と言われるものになるが、彼の満州国容認の立論が、中国は特殊で、言っちゃえば野蛮なんだから文明国が統治するのは正当化されるだろうというもののようだ。この考えは当時において決して異端ではなかった。
しかし、まあ当時の関東軍も日本軍も何を考えていたんだろうな。何のために日中戦争をし、何のために太平洋戦争をしたんだか。

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