2019/07/09

北方謙三版「水滸伝六 風塵の章」

水滸伝六 風塵の章
「地闊の星」「地文の星」「地狗の星」「天猛の星」「地劣の星」

欧鵬は軍の隊長を好きな女を手篭めにされたと思い殺してしまったため、逃亡生活をしてた。欧鵬は宋江らに出会い一緒に旅についていくことにする。
宋江たちはまた賞金首として宋江を狙った馬麟と出会う。李逵は馬麟を叩きのめす。宋江は馬麟をみ、まだ可能性を感じ仲間に加える。その後、宋江は王進に会いいく。そこで宋江はすっかり落ち着いた鮑旭や、指導者として成長した史進と出会う。史進は少華山に戻ることとなるが、馬麟は王進のもとに残すことにした。そしてそのまま史進とともに少華山に向かう。
魯達は秦明を梁山泊に合流させるべく、花栄を通じて会う。腹を割って話をする。そのとき、蕭譲が秦明の文字を真似て書いた手紙をもち秦明に見せ、「信」こそが梁山泊をつなぎとめているもので、官軍では高俅らが、この手紙のようにいともたやすく人を陥れる。その後、秦明は梁山泊に入り、楊志なきあとの二竜山を任されることとなる。
林冲は二竜山に入り、兵たちの鍛える。楊志の息子楊令と出会い、林冲は楊令に稽古をつける。それは対等な関係として楊令を扱い、容赦なく打ちすえていく。林冲は秦明が二竜山に入ったのち、段景住をともなって梁山泊に戻る。段景住は林冲に馬の医者皇甫端という者がいることを伝え、皇甫端を梁山泊に招き入れる。
盧俊義の塩の道を守るため、劉唐のもと双頭山で飛竜軍という新たに致死軍を作ることとなる。
軍学を一通り学んだ阮小五は秦明のもとに実践を学ぶために派遣される。青蓮寺は二竜山に二万五千を出兵させる。秦明と花栄は青州軍に残してきた黄信の寝返りもあり、簡単に勝利してしまう。
王定六は博打がもとで牢に入れられていたが、穴を掘って牢から逃げる。そして父が経営していた店に行くと、曹順という男のものになっていた。怒り、曹順を殺し崔令という役人のもとに行き、なぜ偽の証文をうけいれたのかと問い詰、殺してしまう。そこで王定六は戴宗と出会い、戴宗のもとで働くことにする。
青蓮寺では蔡京の人選で文煥章を送りこむ。李富などよりも年下なのだが、頭が切れた。聞煥章は梁山泊を崩すため宋江をまず叩き潰すことをきめる。
宋江らは、自分たちが危険な状況にあrことに気づく。連絡網がすべて断ち切られていて、梁山泊との連絡のやり取りができない状況だった。青蓮寺の仕業とわかり、洞窟に隠れることにする。そこで陶宗旺は李逵が割ってくれた石を積み、罠をしかける。
王定六は戴宗から、宋江らが官軍の大軍に囲まれていることを告げるため双頭山へ向かう。雷横、朱仝、鄧飛、劉唐らは、宋江を助けに行く。

秦明登場。やはりこの小説の弱いところである人物描写があまりよくなくて、秦明の個性がよくわからない。軍人らしい軍人で曲がったことが大っ嫌いといった程度。この手の叙事詩では仕方がないところだが。また、秦明が梁山泊に入る決心するところも、とてもあっさり書かれている。これも長大な歴史物語にありがちだが、そのあたりは想像しろ、といったところかな。
それに秦明が梁山泊にはいって最初の闘いで、青州軍に仲間を残してきて、あっさりと官軍に勝ってしまうあたり、かなーりご都合主義。でも原作自体がご都合主義だから、まあいっか。『銀河英雄伝説』のイゼルローン要塞を陥落させた時ばりに腑に落ちなかったが。
とはいっても、こういうとこをあまり細かく描写してしまうと、「水滸伝」の壮大さが失われてしまいかねない。こういうご都合主義も講談調でいいものですよ。
この巻は、今後、話を展開する上での布石をしている。とくに盛り上がりに欠けるとこがあるが、いちいちかっこいいのもたしか。林冲が楊令を稽古していたとき、楊令を抱きすくめていたところを秦明が陰ながら目撃するが、そんなところも胸がつまる。
いまだ五人の虎の内、まだ林冲、秦明しかでてこない。いつでてくんだ。

革命というのは、やはり暴力がともなうもので、共産主義は暴力革命を主張していると批判されるが、革命って暴力が必須じゃんと思うんだけど。非暴力の革命なんて、これまで存在したのか。
それと現代の一部の左翼も非暴力を正義と見なしているけど、そんな態度だからバカにされる。
暴力こそが世直しを可能にするようで。

最後に、正直、宋江と晁蓋ってなんなんだ、とまだよくわからない。とにかく深くて大きい人物だというが、いったいそれってなんなんだ。

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