2020/01/05

『大分岐――中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』 K・ポメランツ、川北稔監訳 名古屋大学出版会

僕が高校生のころから、なぜ産業革命がイギリスで起こったのかが疑問だった。なぜフランス、イタリア、中国ではなくてイギリスだったのか。
当時、歴史の教師に質問したことがあるけど、囲い込みと技術革新が起きたから、としか言ってくれなかった。まあその程度の解答しか得られないとはわかっていたが。

本書では18世紀初頭に分岐が起こってたことを論じていて、かつポメランツ氏は分岐の要因を、社会制度や哲学、そして科学革命には求めていない。一定の評価をするが、それでも決定的要因として扱うべきではないとする。
まず東アジアでは労働集約型の産業がメインであるという考えを否定している。すでに東アジアではプロト工業あって、西ヨーロッパと同程度の収益性があったし、また、日本でもよく言われている、中国は中華思想を伝統的にもっていると言われているが、歴史学にこの説が入り込んで、中国でのヨーロッパ品が売れない理由となっているようだ。ポメランツ氏は、日本を含む東アジアでは、ヨーロッパで生産する品は自分たちで生産ができて、別にヨーロッパ産の需要がなかったからということ述べる。
ヨーロッパでは確かに時計などの精密機械は世界で唯一無二の製品で、東アジアに輸入されていたにせよ、数では知れたものだった。
やはりポトシ銀山の銀ぐらいしかヨーロッパは輸出できるものがなかったようだ。
とにかくも、西ヨーロッパでも東アジアでも消費社会がある程度成熟していたし、贅沢品の需要もあった。
などなどまとめようとしたけど、めんどうくさくなってきた。つまりは社会制度や資本投資などで、余剰資本が西ヨーロッパでたまってきて、それが爆発して産業革命がおこったということに異議もだしている。

著者は石炭とアメリカ大陸が分岐をもたらしたと述べている。
石炭はロンドンでとれて、輸送コストがほとんどかからず使用できた点でイギリスには優位に働き、そしてアメリカ大陸は、イギリスが限界に達していた資源をイギリス本土に替わって供給してくれたし、食料もイギリスで生産した工業製品を大量に買ってくれる存在でもあった。
つまり科学技術が発展しようが、それを活用するための環境がなければ蒸気機関の発展もおこらなかった。イギリス以外のヨーロッパの国にも中国にも蒸気機関を活用する術がなかった。彼らが蒸気機関の技術をもっていてもだ。
ヨーロッパの繁栄を、偶然とまでは言わないまでも、分岐が起こる蓋然性を低く見積もっていて、ヨーロッパ文化の優越を否定している。
(石炭は宋の時代にはすでに使われていたけれども、輸送コストが高いために大量に使うことができなかったらしい。)

そして、経済発展というのは環境を人間が食い物にすることであることがよくわかる。ヨーロッパも東アジアも18世紀初頭までには、すでに人口増加と経済面での発展が、資源や居住地は限界にあり停滞していた。そんななかアメリカ大陸がもたらした富は余剰の富をイギリスにもたらしていった。
アメリカ大陸は土地の制約を開放していった。

とは言っても、中国、日本がアメリカ大陸をもっていたとしても、イギリスと同じように産業革命を起こすことができたか、と言えばわからない。著者が言うように「ヨーロッパの奇跡」といってヨーロッパの分岐を16世紀からの始まったとするのも、肯定できないし、そもそも「ヨーロッパの奇跡」ではなくて、「イギリスの奇跡」だ。

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