2020/01/02

「下請忍者」司馬遼太郎短篇全集二

伊賀喰代の郷士百地小左衛門配下の下忍猪ノ与次郎は、スグリの娘木津姫と関係をもっており、木津姫から一緒になれるように父にたのんでやると言われるが、平野ノ馬童子と一緒に脱走する。
与次郎らを育てた老忍たちは自分たちの老後の安泰のためにも、与次郎らを必要としていた。というのも老いた忍者はスグリから情けで食わしてもらっている存在でもあるから。
馬は捉えられてしまい、木津姫は自分と一緒になるように馬に説くが、馬は「いろぐるいめ」と罵って拒絶する。
馬の仕置をわら猿、黒傷、柘植ノ妙阿弥がその役をうける。かれら老忍たちは、みづから死をえらぶかたちで馬に切られていく。わら猿はその場から退散し、余生を乞食でもやるながら暮らしていこうときめる。
わら猿は京へでてきて、与次郎とであう。与次郎は群衆に幻術をしているとこだった。わら猿は与次郎に忍びをつづけるようにいい、今川方鵜殿の蒲郡城に行くように提案し、添書をかいてやるという。その代わり、鵜殿の用が終わり次第、伊賀に戻り小左衛門一家を切ることを交換条件にした。
徳川家の鵜殿攻めがはじまり、伊賀者が城に攻めてくる時、馬と小十にあい、与次郎は切り捨てる。
その後、与次郎は伊賀の下忍仲間の復讐の恐怖から伊賀へもどる。
スグリを斬ったところで何も変わらないと諦念がわき、刀をくさむらに捨てる。そこに輿がやってきてのるようにいわれ、いわれるがまま連れて行かれたところで降りると、喰代百地家の屋敷だった。そこに名張服部党の郷士服部孫右衛門がいて、名張服部家の楊志になれと言われ、促されるままいくと、綿帽子をかぶった木津姫がいた。

この短篇は『梟の城』を書いているときと重なる。
ここでも司馬さん特有の人生観がでている。翻弄されたあげくは思いもよらなかったところにでてくる、というやつですね。
「下忍」という概念が、この小説にも暗さをもたらしている。そして老いた忍者たちの末路なんかも悲しいものだし、現在の忍者受容には、その源でもある司馬遼太郎のこの特有の忍者描写の暗さを、不思議にも引き継がれていない。『梟の城』もけっこう暗さとか残酷さがある話なんだけどね。

2 件のコメント:

  1. 只今「司馬遼太郎短編傑作選」ラジオ大阪他で放送中。司馬史観と言われる前の作品はよいかも。
    戦車隊時代の「歴史と視点」これはぜひ読んで欲しい、ノンフィクションです。

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    1. コメントありがとうございます。なんとラジオでそんな番組がやっているのですね。知りませんでした。
      「歴史と視点」ですか。あまり司馬さんのエッセイとかは読んだことないんですよね。いい機会なので、読んでみます。

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