2020/01/04

「法駕籠のご寮人さん」司馬遼太郎短篇全集二

山崎烝と三岡八郎は法駕籠で鉢合わせをする。
お婦以は養父母が死に、そして夫に先立たれ、口入れ屋の法駕籠をまかされることになった。松じじいは、女ざかりのお婦以のために、山崎と三岡に話し相手になって欲しいことを伝え、二人は頻繁に法駕籠に通うようになる。
困った山崎と三岡は松じじいの、ここ法駕籠で情報交換をしながら金策をすればいいという提案をうける。
松じじいはお婦以が山崎に恋をしていると思い、手を焼くがお婦以の煮え切らない態度にいらいらしながら、山崎は鳥羽伏見の戦いに向かことになる。
山崎がいなくなったあとも三岡は法駕籠にかよっていた。そんなとき松じじいはある晩にお婦以と男がまぐわっているところを見てしまう。
松じじいは、そこでお婦以は三岡とできていたんだと思ったが、維新後、法駕籠をしめるとき、お婦以は松じじいに、手代の庄吉と一緒になることをいう。

法駕籠が提供する料理が法隆寺料理というのだが、これが聖徳太子の時代の中華料理だという。そんで高野山の精進料理は弘法大師が伝えたもので、唐代の中華料理ということになり、ということは法隆寺料理は日本で保存されている最も古い中華料理ということで、なかなかおもしろい。
この短篇はおもしろいですね。
新撰組の山崎烝と倒幕の三岡八郎が、法駕籠で友情をはぐくむ。
そして松じじいのキャラクターがよくて、おせっかいにも悪推量、そしてお婦以を孫娘のようにかわいがっていて、なんともほほめましい。
最後のオチも、まあ予想はつくものだが、それでも読後感が清々しいもの。
そしてこの短篇に流れる通奏低音が、新撰組も倒幕も商売でしかないという、身も蓋もない。そしてそれに殉じる山崎や三岡のおかしさよ。

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