2019/10/01

『マオトコ長屋』司馬遼太郎短篇全集二

『マオトコ長屋』
ちょっとしたミステリー仕掛け。
木場はそうと知らずに間男長屋に住んでしまう。ある時、彼の住むと隣部屋で間男殺人事件が起きる。
銀やんから見たこともない中年の男が秋子の部屋で死んでいると聞かされる。死んでいる男は身だしなみもよく、貧乏長屋とは無縁と感じられた。秋子が帰ってきて、問いただすとその男を知らないという。
当然、秋子が疑われるが、木場は秋子の美貌にやられてしまったのか、秋子がやっていないと信じる。そこで木場は元交通係巡査部長の田村や喜代磨爺らに協力をあおぎ捜査をする。
決めてはコークスが決めてで銀やんが「桃の湯」で使っているものだった。銀やんは嫁が間男していた。銀やんがひょっこりい長屋に帰ると、嫁の鈴子が突然騒ぎ、間男が腹上死していた。銀やんがが帰ってきたことでショック死したらしい。
木場は、こんな長屋に住んでいては自分の縁談に差付ける、明日には引っ越そうと思う。
「木場は、うなだれた銀やんの薄い髪の地肌をみながら、薄情なようだが、そのことばかり考えていた。」と終わる。

山本周五郎『青べか物語』のような要素がある。
登場する人物はだれもがバカで、自己中心的。長屋という小さな世界で噂話がささやかれている。それでも筆致には暗さがなく、楽天的。だれもが愚かだが、愛すべき人物だったりする。
たいして面白い話ではないけど、大阪弁のリズムがいい。軽妙でいきいきしている。

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