2019/10/03

『戦略の形成――支配者、国家、戦争』 W・マーレー、A・バーンスタイン 中央公論新社

いつも読むのが遅くなる。これも購入したのは10年以上前で、本棚にほったらかしだった。上巻がちくま学芸文庫に最近なったことを知って愕然としたわけです。そして読むことにした。
「戦略」なんて大袈裟な言葉に聞こえるが、それほど政治家にしろ経営者にしろ、明確な指針や未来予測があるわけでもなく、場当たり的な対応にならざるを得ないという。というのも、その時々の世論やイデオロギー、政敵、外交問題や内政問題、あらゆることが絡み合っていて、それらをすべて把握してものごとを計画し実行することは不可能だからだ。
そして、偉い人が言う戦略というものに一貫性を見出そうとしても無駄で、戦略を形成する上で、情報というのは常に不十分であるし、どんな人間も長期的な視点でものごとを常に見ることできるわけではない。
現在最良だと思っていても、後にほころびがでてくる。または思わぬ素晴らしい影響があったり。
チャーチルもスターリンもヒトラーも、みんな情勢を読み間違える。ただし、どれだけ間違えないか、それが戦争に勝つ肝だということ。日本の場合は、第二次世界大戦のときはずっと間違いぱなしだった。
まあ、そんなもんでしょう。結局、世の成功者と呼ばれる人たちも、結果がそうだった、というだけでね。えらそうにするもんではないです。
人間社会は混沌としている。人間の無力さというのも感じられる。大きな流れの中で人間の決定とは、どこまで自由でいられるのか。
メディアでは、トランプ政権の戦略だとか、金正恩の戦略だとかなんとかいろいろとうさん臭い解説があるけど、そんなに彼らが世界戦略を練れて実現できるほど、世界は人間に自由を与えているのか。彼らの戦略は、テレビやネットで見ていても、憶測でしかわからないし、なんか首尾一貫した戦略をしている印象を受ける。
だけど、それは世界に法則なんてないにもかかわらず、法則を見出そうとする人間の哀しい習性なのでしょう。
そして世にはびこるマーケティングなるもののうさん臭さよ。

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