2019/04/30

北方謙三版『水滸伝三 輪舞の章』

「地稽の星」「天慧の星」「天機の星」「地俊の星」「地魁の星」「地好の星」「天満の星」
曹正の兄は盧俊義に情報を送っていたが、捕らえられて拷問にかけられて死ぬ。曹正はその後、盧俊義と合流し密州と安丘に店を開き塩の道の情報を集めている。その曹正のもとに魯智深が青面獣楊志を連れてくる。楊志はまだ反政府をの狼煙をあげるのには迷っており、煮えきらないようだった。魯智深に誘われるまま出かける。ある村につくと村人たちが殺されていた。二竜山の賊に襲われていた。楊志と魯智深は残っていた賊を殺すと、大声で泣いていた子供を抱きあげる。子供を連れかえり、済仁美に預ける。この子供を楊令という名をつける。魯智深と曹正とともに賊をうつ作戦をたてる。二竜山の首領らを倒し、二竜山をまとめるよに魯智深にいわれる。
北京大名府では盧俊義がどうも塩の道をだれかが探っているようだという。公孫勝は石秀に探ってくるように言いわたす。石秀は500人もの青蓮寺側の人間を皆殺しにする。青蓮寺はまだ梁山泊が裏で糸を引いているところまではわかっていない。しかもまだ宋江までも目がいっていない。
石秀は村々からの政府側の人間をあぶりだす作戦の際、へまをおかしてしまい、公孫勝から致死軍を去るように言われる。そして二竜山の楊志のもとへいき孔亮を助けるように言われる。孔亮は楊志を裏切りって積荷を盗んだ。その仲介役をまず石秀が行う。孔亮は楊志に、腐った役人どもの賄賂を盗んで何が悪い、これは世直しであることを説く。
晁蓋が同士たちの名前を札にして掲げることを提案する。そして裏側には朱でも名前がかかれており、死んだとい札は裏にされる。
宋江の弟である宋清は兄に合う旅の途上、鄧礼華という女性と一緒になる。鄧礼華は宋清が宋江の弟であることを知らないし、宋清は鄧礼華が盧俊義の情報伝達役で宋江と知り合い出会うr事を知らない。宋江は二人がいっしょに現れたので驚く。宋清は悶々とする日々を送っていた。腐った役人や世の中のこと、自分がこれからどうすればいいのかという、自らの道を定めきれていない様子だ。宋江はそんな宋清を見かねて、一度、国へ帰るように言う。そして考えて、もし鄧礼華と一緒になりたいと言うならば、改めて戻ってくるように言う。
鄧礼華は表向き鄧礼華の妾としてそばに置くことにしていたが、それをおもしろく思わない
西京河南府の東、少華山にいる九紋龍史進は、孤独の中で戦っていた。強すぎることで突然首領の地位に祭り上げられたことで自分を見失ってしまっていた。魯智深はそんな史進をみかねて王進に会いに行く事を伝える。史進は喜び、魯智深とともに向かう。久しぶりに会い、今一度王進のもとで精神的な面を修行し直すこととなる。逆に武松は王進のもとで竈いじりなどをとおして、過去の自分を引きづらない強さを得た。魯智深はそんな武松を宋江のもとにもどるように言う。途中、武松は楊志のもとにも訪れる。
青蓮寺では魯智深が重要人物であることに気づく。また楊志を探る意味でも、近くの桃花山の賊たちを使って二竜山を調べさせようとしたが、その周道という賊が曹正の店で済仁美を気に入り、どうしても買わせろと叫びあばれるという。そんなところから、孔亮や武松はあやしいと思い、周道を尋問するが実際何も知らないらしい。桃花山に行き、李忠に会う。どうやら李忠は妓館を探る仕事をうさんくさいと思っていた様子。李忠は義賊でありたいと思っていたが、やり方がわからない。自分ごときが桃花山で一番強いことで首領をやっているが限界があることを十分に認識していた。そこでしばらく石秀がかれらを鍛えることにする。そして楊志率いる二竜山は食料を確保するためにも輜重隊を襲うことをきまるそのなかで、桃花山が突然加勢してくれた。その後、官軍三千が桃花山と包囲するが、問題なく打ち返し官軍を撤退させる。
武松は宋江のもとに訪れる。閻婆借の様子がおかしい。宋清が戻り鄧礼華と一緒になることを決したと述べる。宋清に鄧礼華のもとに行くようにいう。
間を置き、唐牛児の様子がおかしいので、問い詰めるとどうやら鄧礼華について閻婆借に嘘を伝えていたとのこと。嫌な予感がして宋清のもとにいくと、そこには鄧礼華と閻婆借の死体があった。閻婆借は嫉妬に燃えくるって鄧礼華を殺し、宋清は怒りで閻婆借を殺してしまったあとだった。
事件が事件だけに宋江はすぐに旅に出ることにする。旅はするつもりだったが、思いもかけない状況から出発することになってしまった。宋江は宋清がこれからどうするかは宋清自身が決めることとして、朱仝にまかせることにする。宋江は武松とともに旅を続けていくことに。

いっきに読んでしまった。しかし閻婆借がこんなことになるとは。宋清も不幸だな。やはり漢は哀しみを背負っていかなければ、強くなれないということか。
まあそうするといつもだれか(たいていが女性)が殺されたり、レイプされたり、って流れになるわけですが、そんな流れも常套手段と化し、陳腐な表現になっていきかねない。そんな危険性をこの水滸伝ははらんでいる。この問題は講談や浪曲なんかにも当てはまるところがあって、涙をさそう場面の陳腐化は、この手の話には付きもんだと思うしかない。
『銀河英雄伝説』ですら、あのご都合主義と英雄譚のどこかで聞いた使いまわしが全編で繰り広げられておきながら、この大河ロマンSF小説は名作といっても言い過ぎではないものに仕上がっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿