2021/06/13

夕顔

さてここで悲しい夕顔の話。光源氏と恋をしてしまったために、悪霊に呪い殺されるという悲しさよ。まず光源氏が夕顔に言いよる理由というのが、下の下に良いもんがあるだろうという理由から。腐っている。
で、この怨霊が六条の御息所の生霊だとか。ただ本文を読んでみても、六条の御息所と光源氏の関係性が見えてこない。和辻が言うように、全くもって不完全なかたちとなっている。
この怨霊が誰なのかがどうも議論になっているようだが、とりあえず作品自体が不完全な状態で残っているわけだし、詮索してもよくわからないのは確かだけど、「葵」との関係で読めば、時系列がおかしいにせよ六条の御息所であるのは妥当だし、でなければ誰なの? 他の登場人物では弱くないかと思う。
「葵」では、生霊となったことを六条の御息所も自覚し、光源氏も彼女が生霊であることを認知している。だからそのあと別れることになるわけで。だから、ここの怨霊は六条の御息所ではないということもわかる。
でも、伏線とみても悪くない。

ただし描写はなかなか美しいところではある。山彦がこだまするなんていうのも、情景描写としては古典的だけど、「源氏物語」自体が古典中の古典なのでいいでしょう。怨霊も非常に簡潔な形で描いていて、想像力がかきたれれるではありませんか。
でも、夕顔の死後の光源氏はけっこうひどいもので、夕顔が死んだの逃げちゃうし。死体の処理を他人に任せちゃうし。
頭中将と夕顔との間に娘がいることが判明するが、これが玉鬘と。

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