2021/04/16

『風と共に去りぬ』 第1巻 マーガット・ミッチェル/鴻巣友李子訳 新潮文庫

滅法面白い。
スカーレットが無教養な箇所の描写なんかもよくって、バーベキューでレット・バトラー初登場の際にアシュリーがバトラーを評して、ボルジアみたいな人だというけど、スカーレットはなんだかわからない。それにチャールズは嘘だろこいつ的に飯能するが、無教養を装っているのかもしれない、淑女のたしなみ、みたいに勘違いしたりする。
スカーレットは、周りの女たちを見下しているから、同性の友人がいない。そして男たちを誑かすことに喜びを見いだし、結婚する気もないのにインディアに入れ込んでいたスチュアートを落したりする。自分がどう見られ、人をどう扱えば自分に好意を与えてくれるかが完全にわかっている人間として描かれている。
第1巻では、スカーレットの失恋と、自暴自棄のチャールズとの結婚、そして夫の死。この死も滑稽で戦死ではなくて病死。ひどい。さらにひどいのがチャールズとの子供をじゃけんにしているこっと。アトランタでの日々でバザーでレット・バトラーとの再開。
このバトラーとの再開は素晴らしい。バトラーの魅力はよくわかる。無頼で正義なんて信じていなくって、金儲け主義者と思わせるが、どこか筋の通っており、なにか真理めいたものを持っている人間。アシュリーやメラニーは逆にどこか偽善を感じるわけで。
「ほかの女性たちは結局なにも考えずに、郷土愛だ大義だと言って騒いでいるだけなのではないか。男性たちも死活問題だ州権だと騒いでいて、同じく目もあてられない」(380)
そしてスカーレット自分自身だけが良識をもっていると思っている。
スカーレットは男性にせよ女性にせよ、たらし込む術をよく心得ていて、そのういうときは謙虚を装うこともできる。
アトランタに来て、スカーレットは<タラ>の赤土を懐かしんだりする。結局、ジェラルドが言ったようにスカーレットは<タラ>しかないのだと言った感じ。
バザーでメラニーを含めて皆が大義だとかを口にしているなかでスカーレットだけが冷めて周囲をバカにしている。スカーレットは傷病病院での仕事に嫌気がさしていたが、メラニーは天使のように看病をしている。このあたりスカーレットが悪女のように思わされるが、逆にメラニーの態度が逆に何か奇妙なものを思わされるなにかがある。それは偽善の溢れる世の中で象徴であるかのように。
メラニーもピティ叔母もスカーレットを誤解している。
スカーレットが指輪を寄付するところなんかも、ストーリテラー的な感じで読ませるおもしろさ。で、バトラーがメラニーの指輪だけを買い戻してあげるなんかも、よくできている。
スカーレットとレット・バトラーとの再開でダンスを踊ったことが、<タラ>にまで聞こえ、ジェラルドが連れ戻しにアトランタに来るが、ここのやりとりもいい。スカーレットが泣くのをなだめ、バトラーに会いに言ったと思ったらポーカーで大負けして大いに酔っぱらう。
スカーレットはジェラルドがポーカーで大負けしたことをエレンに黙ってあげるかわりに、<タラ>に戻らなくていいことを約束させる。
ここはなんかお約束事のような展開だが、ジェラルドの滑稽さがよくでていていいし、バトラーの「悪さ」もでていていい。
南部の工業力の脆弱さもきちんと指摘していて、しょせんは綿花王国でしかないみたいな、ことが書かれている。だから北部に負けるのは必然であると。
んーどこかで聞いた話みたい。
素晴らしい小説。各登場人物のキャラがよくできているし、軽快なストーリー運び。
んーいい。

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