2020/09/18

『物語 フランス革命――バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで』 安達正勝 中公新書

エドモンド・バーグ『フランス革命の省察』を読むにあたってのフランス革命のおさらいのために読む。コンパクトにまとまっており良かった。

当初は、革命派は王政を廃止しようとは考えておらず、立憲民主制を考えていた。しかし、ヴァレンヌ事件によって王への信頼がガタ落ちになり裁判となり死刑。このヴァレンヌ事件の首謀者はフェルセンで、『ベルばら』のフェルゼン。
ルイ16世の評価が変わってきているようで、暗愚ではなかったという。ルイ16世がギロチンの刃の形状を考案したという説を知った。そうなのか。ルイ16世が、まさに自由、平等を重んじていたからこそ、フランス革命が起きたというのは、そうだよね、としかいいようがない。ふつーなら暴動を徹底的に潰すものだし。
ルイ16世はアメリカ独立戦争の際にアメリカ側に加担する。これは反イギリスだからってのもあるが、ルイ16世の思想も影響しているようだ。フランスでは啓蒙君主の登場はルイ16世と言ってもよかったかもしれないが、時代はそうはさせなかったということだ。

ロベスピエールはやはり潔癖すぎたのでしょう。ポルポトもそうだったように、良かれと思って多くの人を粛正していく。権力欲からではなく理想のためというのが悲劇。猜疑心やらが心を蝕んでいくのでしょう。
ロベスピエールのヤバさは、「至高存在」を持ちだしてきたところで、霊魂の不滅までも言い始めてしまことだ。理性を信じた極致といっていい。キリスト教の神ではよくないからって、「至高存在」なんというものをもってくるあたりがヤバい。しかも祭典までおこなってしまっている。
本書で少し触れられているのが、ジロンド派が経済的自由を主張するがロベスピエールは生存権をもって反論する。生存権というのはある種究極の反論で、まったくもって現実的な解を提示しない愚論だが、民衆への説得力は計りしれない。
矛盾するかのような「自由による専制」だが、これは段階的な革命論で、まず絶対王政という専制を打倒し、それにともなう諸外国との戦争に勝ち抜くために非常事態体制をとり、そして真の自由を勝ち取る。
民衆はこの考えに賛同し、恐怖政治自体も民衆が望んでいたものだったという。搾取される側の反抗とは、こういう矛盾が潜んでしまう。だから穏健に改革していく必要があるのかもしれない。そうすると人は必然に保守主義になるな。

本書で際立っているのが、女性たちの活躍を強調していることだ。フランス革命では多くの女性が革命に参加し、戦争にもいった。ロラン夫人ねー、忘却の彼方にいましたが、ジロンド派の影の支配者。マレー暗殺を実行したシャルロット・コルデーなどなど。

また死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンについても書かれていて、知らなかったが彼は死刑執行するだけでなく医者でもあったという。しかも単なる町医者ではなく、王家、貴族などを診察したり、難病を治したり、貧しい人には無料で治療してあげたりと、死刑執行する贖罪の面もあったようだ。彼はルイ16世やマリーアントワネットなど知り合いを自らの手で死刑にしていくことで荒んでいったようだ。
安達氏曰く、ギロチンという処刑方法は人道的観点から導入されたが、これがかえって裏目にでて恐怖政治の出現を許してしまった面があるという。拷問や惨たらしい刑であれば、大勢の人間を粛正することはできなかっただろうと。そうだねー。これってけっこう重要な指摘かもしれない。恐怖政治を敷いても、殺すというの現代では銃だとか生物兵器だとかいろいろと大量殺戮させる方法はあるが、当時は一人ひとりをきっちり誰かが殺す必要があったわけだ。戦争とは違い、平時におけるテロリズムの質は全く異なるな。ギロチンなくして達成しえなかったテロリズムだということ。

いい復習になった。どうやら調べたら、バルザックの『サンソン回想録』というのが近いうちに出版されるよう。読んでみるか。

0 件のコメント:

コメントを投稿