2020/06/01

「おお、大砲」司馬遼太郎短篇全集四

和州高取の植村藩の中書新次郎はブリキトースという家康の大阪の陣で使った大砲を管理する役目をもつこになる。さらに新次郎は金峰古流という小太刀剣法皆伝をもち、そのシルシに独鈷と「洞川行坐山林絵図」を譲り受けていた。
新次郎は次男のため家を継げず、京へいき蘭学を学ぶ。平山玄覚という浪人が訪ねてきて、金峰古流のシルシを譲ってほしいといわれる。新次郎は了承するが、後日試合をすることになる。しかし、新次郎は高取に帰ることになる。
帰った早々、妙と婚儀を行うことになり、ブリキトースを管理する笠塚家に婿入りをする。使い方を口伝で、しかも他の大砲方は秘法ということで何も教えてくれない。仕方がないので、自分で研究していく。新次郎はすでに蘭学をおさめていたこともあり化学のいろはをしっていた。
天誅組が高取に攻めてくることになり、新次郎は大砲だけで蹴散らしていく。他の大砲方は使い方もとうにわからなくなり、またはひびがはいっていたり使い物にならず、新次郎のみの大砲で天誅組を追っ払う。
遠目でみると天誅組のなかに玄覚がいるのをみる。
明治になり、洋館の工事現場で玄覚をみつけ、大砲を撃ったのは自分であることなどを語る。その後二度と会うことはなかった。
「侍のころは、ばかばかしいことが多かったな」

司馬さんが好きそうな話です。新次郎という近代主義的な人間と、旧弊に取りつかれた能無したち。
このあたりぐらいから、司馬遼太郎の近代主義者的なところが前面にでてきている。
ブリキトースという「古代兵器」を神仏のように拝むだけで、発展させることもせず、無為にすごしてきた江戸時代。
平和とはこういうものだろう。

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