2020/06/25

『死を悼む動物たち』 バーバラ・キング/秋山勝訳 草思社

「死を悼む」とはなんでしょうか。近しい人の死に直面して、「悼む」のはなぜなのでしょうか。
「悼む」のは人間だけではなく、多くの哺乳類にも同様の本能があるようです。
感情というのは本能であって、人間が後天的に獲得するものではないし、人間以外の動物が感情を持っていないわけでもない。
「動物は本能で生きている」という認識は当然間違っておらず、そもそも悲しんだり、怒ったり、笑ったりするのも本能だということです。

社会生物学的に見ると本書で上げている事例は、なんら実験によって裏付けられるものではないし、単に死に対して行った行動を人間が自ら感情を動物たちに投影しているにすぎないと見られかねない。
科学的根拠はないのだけれど、でもですね、科学的根拠ってなんかなくても、見てればわかるというもんです。

動物たちは機械的にあらゆる行動を起こしているわけではない。様式は人間と異なるにせよ、動物たちは目的、意図があり行動している。さらに外部からの刺激で怒ったりだってするでしょう。
動物に感情がないというのは、一種のデカルト主義でしかなくて、他者が思考や感情の存在証明も原理的は不可能なのだから、結局は独我論でしかないわけです。

「悼む」というのは人間を含めて機械的な感情として本能に埋め込まれているものにすぎないのかもしれない。「悼む」ということは、複雑でもなんでもない感情なのだろう。
人間も「悼む」ことするが、じつは大したことのない感情かもしれない。

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