しかし酷いのなんの。どうしてここまで虐殺が起こるのか。
本書で、ユダヤ人大虐殺の見方が変わる。ぼくなんかそれほど知識ないから、ホロコーストといえばアウシュヴィッツのような強制収容所での虐殺だけを念頭においていたが、実際には大半のユダヤ人がモロトフ=リッベントロップ線以東で殺されている。
おそるべきはナチスのバルバロッサ作戦の失敗がユダヤ人の東への移送を不可能にし、その結果として大虐殺がおきていくということだ。
第一世界大戦から第二次世界大戦の終了まで、東欧の歴史はあまりに悲惨すぎる。
下記はメモ。
ナチスの対パルチザンとユダヤ人の殺害は同じものとして扱われた。パルチザンの活動は民衆やユダヤ人を助けた面もあるが、ナチスが民衆とユダヤ人を問答無用で殺害する動機にもなっていた。
ベラルーシ―などでパルチザンが結成されていくが、ある不安があった。ナチスを追い出した後にスターリンはパルチザン組織を弾圧するのではないか。ということでスターリンは共産主義の教義上、下から勝手に組織が出来上がることはよくないので、これらのパルチザンはナチスの手先として
ナチスは民間人の退避計画を組織できなかった。しかし軍はソ連に降伏するよりはイギリス、アメリカに降伏したほうがいいと考えて西に逃げていたという。ひどい話。それでソ連へに民間人の男は殺されるか強制収容所に送られ、女は強姦されていく。
ナチスの敗戦後、新生ポーランドが生まれる。共産主義政党はすべてのドイツ人を追放、排除することを決める。これはポーランドだけでなくチェコスロヴァキアでも起きた。ポーランド人にとっては共産主義は好ましい相手ではなかったが、土地を与え、ドイツから守ってくれるのがソ連だった。
「大祖国戦争」では、実際に戦地となり、勝利していったのは、ベラルーシ、ウクライナであり、死んでいった者たちもロシア人よりユダヤ人、ベラルーシ―人、ウクライナ人が多かった。しかし、スターリンはそれを隠し、ロシア人の勝利として扱っていった。ここで疑問なのだが、グルジア人であって、生粋のロシア人ではなかったと思うのだが、それでもロシア人に肩入れしたのはどういう理由なのか。マジョリティであるロシア人の顔色をうかがったのか?
ソ連にとってナチスがおこなったホロコーストをあまり宣伝材料に使いたくはなかったようで、というのもソヴィエト人の手を借りて膨大なユダヤ人を殺害していったからだという。
ユダヤ人虐殺ではアウシュヴィッツが象徴として取り上げられる。たしかにアウシュヴィッツは死の工場であったが、大量飢餓発生地域やトレブリンカのほうが虐殺の効率性はよかった。そしてアウシュヴィッツはユダヤ人コミュニティを形成していたポーランド、ソヴィエトのユダヤ人が多数殺された場所でもなかったアウシュヴィッツが中心的な死の工場となったころには、すでにポーランド、ソヴィエトのユダヤ人は殺害されていた。アウシュヴィッツは大量虐殺の最終章だったという。
モラルとは何か。ナチスもソ連も、これらはひとつのモラルだった。
ある目的のためには犠牲が伴う、という期待が現在の悪を将来の善であると信じていた。
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