2019/09/29

『大阪醜女伝』司馬遼太郎短篇全集二

『大阪醜女伝』
瓶子は戦後、ミナミにあるうどん屋の出前持ちになった。「おばけ」と屋号と変えて、瓶子は看板娘になる。年を取るにつれて、若かった時の醜さが薄れ、マグロ漁師のような豪快さを備えはじめた。
ある日輝夫と再会する。輝夫は傾きつつある新聞社の記者をやっていたが、瓶子に仕事を馬鹿にされれる。その報復に輝夫は瓶子をからかいにお店にいったり。
瓶子はキタに店をかまえるために金を貯めていた。あるときキタにいい物件がでたため購入するために出かけるが、考えを変えて輝夫が務める新聞社を購入することにして社長の座を得る。
瓶子は輝夫を秘書にして取引先の挨拶回りに行く。そこで輝夫と関係をもつ。瓶子は、はじめて男と寝たがたいしたことがないつまらないことであることを悟り、輝夫との関係も冷めてしまう。そしてなおいっそう商売に精進するようになる。

瓶子は自分を男であると考えていた、と書いている。男は金を稼ぐ存在というふうに定義している。このあたりなんか、瓶子の哀しさや滑稽さがでてくる。
まだ日本は戦後の荒廃から抜けきれていない状況で、金を稼ぐことの泥臭さがよくでていると思う。
一連の大阪商人を扱っている司馬さんの短篇は、一貫してこの泥臭さが前面にでていて後年の文体である「冷たさ」とは違うものがあるが、しかし一貫して人間の数寄を描くのが好きだったんだなと思う。
それと輝夫が新聞記者であるというも、司馬さんはなにか含んでいるのかな。邪知すれば、元新聞記者ということもあり、新聞記者を商売を卑下している。大阪でたくましく生きる市井の人びとに人間の醍醐味があるかのよう。
このころはまだ司馬さんは有名ではないし、これから世に出ていこうという野心がぎらぎらとあった時代かと思う。
まさに、つまらない欲望にまみれず、一心に金儲けにいそしむことと自分を重ねていたのでしょうか。

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