2019/09/08

『ラストエンペラーと近代中国 (中国の歴史10)』 菊池秀明 講談社

中国にとっての近代は、日本の近代とは違い、ネガティヴなものだったという。なるほど。
本書、太平天国の発生から第二次国共合作までの約100年間を書いていて、情報量がすごくてカオスみたいになっている。カオスと言っても、ただ近代中国の情勢がカオスなだけで、よくもまあ著者はまとめたなあと思う。
そのため、本書をまとめようにもまとめられない。でも、とっても面白かったですよ。
ただし題名にあるラストエンペラーは、それほど登場しない。魯迅のほうがよく登場する。

太平天国の乱から始まる。この乱は中国にとっての近代の幕開けであって、後の洋務運動や人民公社などの思想に影響を及ぼしていく。
洪秀全は科挙に失敗しつづけて、ある日夢で妖魔に憑りつかれ、そして拝上帝教という中国の土着の文化がまざったキリスト教を創始する。南京を制して天京と改めて、北伐を開始する。内部分裂などによって、最終的に曽国藩によって崩壊させられてしまう。
この運動では、実際問題はおいておいて、儒教的な階級制度の廃止、男女平等、欧米の文化の摂取をうたっていたという。
太平天国が、近代中国に与えた影響というのが大きいという。僕はそんな認識をいっさい持っていなかった。そして、それまでの中国では北方からの異民族の風が歴史をつくってきたが、近代は南からの風の時代になったという。

当時の大陸は日本を含めた列強の戦場だったのがよくわかる。各国がお互いを牽制しながら、バランスを保っていたり、たまにそのバランスが壊れたり。
とにかく各国の思惑に振り回されていたのがよくわかる。

そして、中体西用というのが、明治維新のような日本の西洋受容のあり方とは違って、儒教の古典に西洋文明を見いだす、といった感じだったという。
これは、たしかどこかで同じようなことを読んだ記憶がある。論語の「友、遠方より来る」というのを西洋の機会平等かなにかとして読み直したとか。記憶があいまい。
本書では、郷挙里選、郷官制度、天朝田畝制度などをあげている。
それがいつもまにか儒教が中国社会の停滞の原因と認識されはじめられていく。
康有為や劉啓超ら清朝時代の知識人は立憲君主制を志向していて、孫文や蒋介石らは共和制を目指していた、というのもあーたしかにそうだよねと考える次第で。

国民党と共産党の争いというのは、結局どちらも独裁的な政権の樹立を目指していて、それは両方共にソ連の影響からだというのだから驚き。とくに国民党がソ連から影響を受けていたというのは知らなんだ。
ということは、仮に国民党が共産党に勝っていても、あんまり政治体制、制度は共産党とかわらなかったのかもしれない。

かなり、内容は入り乱れていて、誰かが失脚したり、復活したり、そして亡命したり、そしてまた復活したりなど、よくわからない状態で整理がつかない。事件もいっぱい起こっていて、とりあえず要約なんか許さない状況。歴史とはかくあるものだと思う。

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