2021/01/14

『牛と土――福島、3.11 その後。』 眞並恭介 集英社文庫

 「牛の経済的価値は失われ、もはや家畜ではない。ここにいれば被曝はするし、これから先も餌代はかかる、手間もかかる。そこになんの意味があるのか。それを見いださないかぎり、自分らのやっていることには意味がない」(68)
被曝した牛を、安楽死ではなく生かしす選択をした被災者を描く。
読んでいてつらいものがある。牛を放っておけば餓死をするし、もしくは人に家を荒らしてしまう。それに牛を生かしても被曝した牛に価値があるのかと、安楽死させる。政府もそれを言う。
安楽死させる選択は決して非難できるものではない。
安楽死を選択した人にとっては、牛を生かしている人を非難したくなってしまう。
誰が悪いって、政府と東電なのに、被災者同士がいがみ合う現実。
悲しいですね。
牛を生かす理由って、かなり根源的な生への問いかと思う。牛を農地で草を食わせて生かせておけば、農地もすぐに復活できる。でも、これはある種の方便なのかもしれない。
そうしないと行政も人々も納得させることができないから。

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