2018/08/28

『モンゴル帝国誕生 チンギス・カンの都を掘る 』白石 典之 講談社メチエ

基本的には面白い内容ではあった。現在のモンゴル史の考古学的発見がどんなものかがわかる。アウラガ遺跡から、農耕を行っていて鉄の生産までしていたことがわあっとのこと。しかもこの鉄の生産の話の中で、インゴットを使用して鉄器をつくっていたらしい。確かに砂鉄から精錬は大変だ。このインゴットを遠征先までもっていったらしいのだ。
あと実はチンギスの暮らしは質素だったらしく、絢爛豪華とは程遠いものらしい。
と、まあ考古学的な話は面白いのだけれど、最後の章でチンギスの分析をしていて、経営学的な視点から評価し直している。これがいただけない。シフト、コストダウン、モバイル、リスク回避、ネットワークなどの経営学の用語を用いてチンギス成功哲学を語っているが、そんな単純な話でもないだろう。経営学のリーダー類型分析とかあほらしいものだし、普通、上に立つものならば言わずもがななのだ。ただこれらの行動を適切に行えるかどうかが問題であり、凡人はわかっちゃいるけどできない、というのが非凡と凡人の差なのだがね。確固たるビジョンを持っていたからチンギスはすごいというけど、僕だって確固たるビジョンはある。ただそれを実現するだけの計画性や粘り強さ、または徳がないのだ。
もっと考古学に徹した内容であればよかったのに。

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